ベン・シャーンの「ペン先が奏でる魂の叫び」
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リトアニア:Lietuvos Respublika|カウナス:Kaunas|Googleマップ
当時のロシア帝国領リトアニアは、ロシアから1831年と1863年に蜂起するがいずれも失敗に終わり、リトアニア語による出版物が禁じられロシア化政策が強化され・・・
1877年の露土戦争の後、ロシア帝国とドイツ帝国の関係が悪化するのに伴い、1868年から第一次世界大戦が始まる1914年までの間に約635,000人、人口のおよそ20%がリトアニアを離れ、難民となりその多くはアメリカへ移住する・・・
貧しい木彫職人の父・ヨシュア・ヘッセルと母・ギッテル・リーベルマン=シャーンのユダヤ人両親と共にベン・シャーンは7歳の1906年、移民としてアメリカに渡りニューヨークのブルックリンに住み、石版画職人として石版画工房で働きながら貧しい生活のなかで美術を学びはじめる・・・
1914年(大正3年)から1918年(大正7年)にかけて第一次世界大戦が始まり、人類史上最初の世界大戦が終わる1917年、レーニンにより革命が勃発、300年続いたロマノフ王朝最後の皇帝ニコライ2世を処刑しソビエト社会主義共和国連邦が成立、世界は二極化へと歩み始める・・・(ベン・シャーン19歳)
(注) 現在はリトアニア第二の都・カウナスにある 「日本のシンドラー」とも呼ばれている外交官杉原千畝がいた元日本領事館が杉原記念館となっている・・・
https://ja.wikipedia.org/wiki/カウナス
https://ja.wikipedia.org/wiki/リトアニア
「フランスの労働者はあなたに警告する...奴隷は奴隷制度、飢餓、死を意味する」 1942年|72.4 x 101.3 cm||Gift of the War Production Board U.S. Government Printing Office, Washington, D.C. ニューヨーク近代美術館蔵|MoMA (The Museum of Modern Art) New York, Manhattan ベン・シャーン:Ben Shahn(1898年〜1969年) |
1919年にベン・シャーンは生物学の学生としてニューヨーク大学に、
1921年にはNational Academy of Designで芸術を学び、
1924年にティリー・ゴールドスタイン:Tillie Goldsteinと結婚後、
2人は北アフリカを経てヨーロッパを旅し、
当時のパリでマティス、ルオー、ラウル・デュフィ、ピカソやパウル・クレーなど、
一流アーティストの作品を目の当りにし、自己の画風を再認識する・・・
"Sacco and Vanzetti" "The Passion of Sacco and Vanzetti" (1967, mosaic), Syracuse University, Syracuse, NY 1920年イタリア系労働者ニコーラ・サッコとバルトロメオ・ヴァンゼッティ二人が、 製靴工場を襲い二人を殺して現金を奪った強盗事件の犯人として、 物的証拠もないまま犯人に仕立て上げられ逮捕、“冤罪”として助命嘆願運動も虚しく、 1927年二人は電気イスにより死刑執行され、アメリカ裁判史上最大の冤罪事件・・・ 1931〜1932年|テンペラ| 214.6x121.9cm|ホイットニー美術館所蔵|Whitney Museum of American Art ニューヨーク近代美術館蔵|MoMA (The Museum of Modern Art) New York, Manhattan ベン・シャーン:Ben Shahn(1898年〜1969年) |
そして労働者階級出身のベン・シャーンは、
事故や冤罪、労働問題、人種問題などの社会問題を描き、貧困や差別、
戦争などをとりあげた社会派として時代に登場する・・・
"Miners' Wives" イリノイ州のセントリニア地方の災害に関するHarperの雑誌の記事用のイラストレーション、 記事は1948年3月に出版され「セントラニアでの爆発第5号:鉱山の災害は誰も止められませんでした」と題された・・・ 1948年|フィラデルフィア美術館蔵|Philadelphia Museum of Art, Philadelphia, ベン・シャーン:Ben Shahn(1898年〜1969年) |
世界からの移民の流入と先住民族の虐待の中で、民族の坩堝のように、時を刻むアメリカ、
人々は二つの祖国を持つ者としての苦悩を背負い宿命的な社会問題を抱える・・・
1929年にニューヨークで5歳年下の写真家、ウォーカー・エヴァンズと出会い、
一時は彼とアトリエを共有し、ニューヨークのダウンタウンの人々のスナップ撮影や、
1935~1938年にはりエヴァンズとともに農村安定局のスタッフとなり、
アメリカ中西部や南部の疲弊した農村地帯を取材し、
写真家としてのクロスメディアアーティストとして撮影した写真は1,400枚以上に及ぶ・・・
Label: Columbia CL 632 / Philips 7061 (Europe) 12" LP 1955 Illustration: Ben Shahn Design: Neil Fujitar ベン・シャーン:Ben Shahn(1898年〜1969年) |
アフリカ系黒人奴隷の心に流れるジャズ、彼らの苦しみや悲しみのリズムはやがてアメリカを代表する音楽へと成長し、レコードジャケットにベン・シャーンの魂も描きこまれていく・・・
そして、第一次世界大戦が終結後の1920年代初頭にはアメリカを代表する音楽スタイルの一つとしてジャズは、アメリカ国内の大都市に急速に広まり、享楽的な都市文化が発達し、レコードやラジオはもとより大量消費時代・マスメディアの時代の幕開けは、フランスの「レ・ザネ・フォル」(狂乱の時代:Les Années Folles)に相当するこのアメリカの隆盛期は「ジャズ・エイジ」(Jazz Age)と呼ばれている・・・
しかし時代は・・・
1929年に発生したウォール街大暴落(Wall Street Crash)に端を発した世界大恐慌は、4人に1人が職を無くし、一杯のスープを求め街角の配給所に無数の列をつくり、農民は借金で農地を無くし、大恐慌はアメリカ全土に吹き荒れた・・・
アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトが1933年、世界恐慌を克服するために行ったニューディール政策(New Deal)で、雇用促進の一環として美術振興政策で美術家にも壁画という仕事が与えられ、メキシコの社会派の画家ディエゴ・リベラの壁画制作の助手を行ない、1935年政府の再入植局からの依頼で3年間、ライカのカメラを持って各地の事情調査を行い、クロスメディアアーティストとして幾多の写真を残している・・・
第二次世界戦争後の社会運動は、1950年代にアメリカ合衆国で発生した反共産主義に基づく運動家を次々に追放するマッカーシズム(McCarthyism)のレッドパージ、戦後の日本での赤狩りへと動く・・・
そもそも彼が生きた、禁酒法の時代からベトナム戦争までは、アメリカの栄光と裏腹の人種差別や迫害、貧困などの多様な社会問題を抱えた光と陰の時代でもあった・・・
1960年からのベトナム戦争は世界中の反戦運動の中で、1966年頃にヒッピーを中心としてアメリカ西海岸に始まり、サイケデリックを生み、1973年のパリ休戦合意に基づいてアメリカ合衆国は遂にベトナムから撤退する・・・
"Liberation" 第二次世界大戦中にドイツに占領されていたフランスが解放されたという報を聞いて描かれた・・・ 1945年|Gouache on board|75.6 x 101.4 cm|ニューヨーク近代美術館蔵 MoMA (The Museum of Modern Art) New York, Manhattan ベン・シャーン:Ben Shahn(1898年〜1969年) |
1955|Wood engraving|39 x 53.3 cm|International Graphic Arts Society, New York
ニューヨーク近代美術館蔵|MoMA (The Museum of Modern Art) New York, Manhattan
"Carnival" 1946年|テンペラ|56x76cm|アメリカ 個人蔵 ベン・シャーン:Ben Shah(1898年〜1969年) |
121.92 x 212.09 cm|The Phillips Collection
"Spring" 1947年|テンペラ|43x76cm|オルブライト=ノックス美術館蔵 Albright-Knox Art Gallery, New York, USA ベン・シャーン:Ben Shahn(1898年〜1969年) |
1950年代から1960年代にかけて、黒人のアフリカ系アメリカ人が、
公民権の適用と人種差別の解消を求めて行った1963年8月28日のワシントン大行進・・・
マーティン・ルーサー・キング・ジュニア:Martin Luther King, Jr.は叫ぶ・・・
「I Have a Dream」(我々には夢がある・・・)
そしてその流れは、世界のガンジーへ・・・
Martin Luther King, Jr. March 18m 1965 絵にはマーク・トゥエインの「不思議な少年」という文章が添えられている・・・ ベン・シャーン:Ben Shahn(1898年〜1969年) |
しかしベン・シャーンは、石に刻むような魂の線で、我々に時の真のありかを伝えた・・・
"Lucky Dragon - Aikichi Kuboyama" 第五福竜丸は、1954年3月1日に、ビキニ環礁で、アメリカ軍の水素爆弾実験によって発生した、 多量の放射性降下物(死の灰)を浴びた、遠洋マグロ漁船の船名である。 無線長だった久保山愛吉がこの半年後の9月23日に死亡した・・・ 「放射能病で死亡した無線長は、あなたや私と同じ、ひとりの人間だった。 第五福竜丸のシリーズで、彼を描くというよりも、私たちみなを描こうとした。」 (絵ベン・シャーン 構成・文アーサー・ビナード「ここが家だ」より) 1960年|福島県立美術館所蔵:Fukushima Prefectural Museum of Art ベン・シャーン:Ben Shahn(1898年〜1969年) |
1960年ベン・シャーンは来日し、日本の若手デザイナーやイラストレイターの和田誠や安西水丸、
似顔絵の山藤章二など、多大な影響を受けた人は多い・・・
「あまたの人々・・・」 "Rainer Maria Rilke, For The Sake Of A Single Vers" 詩人ライナー・マリア・リルケ(Rainer Maria Rilke)の漂泊の想いを綴った石版画集「マルテの手記」より・・・ ベン・シャーン:Ben Shahn(1898年〜1969年) |
街で行き交い、その名もなき「あまたの人々・・・」の声、それは二度と出会う事のない人々・・・
詩人ライナー・マリア・リルケ(Rainer Maria Rilke)の石版画集にその声を24点の挿画に託し、
ペン先から奏でられた魂の叫びは、まろやかなな影となり、
1969年、71歳のベン・シャーンは旅立った・・・
ベン・シャーン:Ben Shahn(1898年〜1969年)
(以下・参考サイト)
ベン・シャーン(Ben Shahn, 1898年9月12日 - 1969年3月14日)は、リトアニア生まれ、アメリカ合衆国の画家。ユダヤ系リトアニア人。20世紀アメリカを代表する画家である・・・
https://ja.wikipedia.org/wiki/ベン・シャーン
ニューヨーク近代美術館|MoMA (The Museum of Modern Art) New York, Manhattan
https://www.moma.org/artists/5366?locale=en&page=1&direction=
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2011/benshahn/
https://ja.wikipedia.org/wiki/カウナス
https://ja.wikipedia.org/wiki/リトアニア
https://ja.wikipedia.org/wiki/ロシア革命
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジャズ・エイジ
https://ja.wikipedia.org/wiki/レコード
https://ja.wikipedia.org/wiki/ラジオ
https://ja.wikipedia.org/wiki/アメリカ合衆国における禁酒法
https://ja.wikipedia.org/wiki/世界恐慌
https://ja.wikipedia.org/wiki/ニューディール政策
https://ja.wikipedia.org/wiki/ディエゴ・リベラ
https://ja.wikipedia.org/wiki/マッカーシズム
https://ja.wikipedia.org/wiki/赤狩り
https://ja.wikipedia.org/wiki/レッドパージ
https://ja.wikipedia.org/wiki/アフリカ系アメリカ人公民権運動
https://ja.wikipedia.org/wiki/ワシントン大行進
http://content.time.com/time/covers/0,16641,19650319,00.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/マーティン・ルーサー・キング・ジュニア
http://ameblo.jp/s0008/entry-10841471080.html
http://www.bl-school.com/blog/ben-shahn/
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13118712763
http://ww5.tiki.ne.jp/~gakurou/library/fsgn.htm
不思議な少年:The Mysterious Stranger
https://ja.wikipedia.org/wiki/不思議な少年_(小説)
「わたしは画家である。芸術に関する講演者でも芸術の学者でもない。
http://www.modernart.museum.ibk.ed.jp/archive/report/pdf/2016/2016_kinbi2.pdf
http://www.art.tokushima-ec.ed.jp/text/yomi/1230051_1.html
http://ameblo.jp/s0008/entry-10841471080.html
http://www.tongariyama.jp/weblog/2012/03/post-1385.html
http://www.marunouchigallery.com/jp/exhibition/past/benshahn2/
http://ameblo.jp/s0008/entry-10841471080.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/ドレフュス事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/第五福竜丸
詩人ライナー・マリア・リルケの『マルテの手記』
https://ja.wikipedia.org/wiki/マルテの手記
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