大阪城の「小さな桃源郷」
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ユートピア的な理想郷の物語として我々に語り伝えられながら「桃」は雛祭りの他には岡山の桃太郎へと話は変わる。そして今や、春は桃より桜がメインとなり、昔はもっと桃の木が家々にあったような記憶も、関西で「桃の花」を鑑賞するには珍しいと、大阪城の「小さな桃源郷」を歩いてみる・・・
大阪城桃園|大阪市中央区大阪城|Googleマップ
(2017年4月4日撮影)
ここちよい春のねむりは「春眠暁を覚えず...」と、よくご存知の漢文の絶句で「孟浩然」が謡い、
同時代で盛唐の自然詩人「王維」もよく似た「春眠と桃」を詠んでいる・・・
「春暁」しゅんぎょう/孟浩然:もうこうねん/「孟浩然詩集」五言絶句
春眠不覺曉 春眠(しゅんみん) 曉(あかつき)を 覺(おぼ)えず 處處聞啼鳥 處處(しょしょ) 啼鳥(ていちょう)を 聞く 夜來風雨聲 夜來(やらい) 風雨(ふうう)の聲(こえ) 花落知多少 花落(はなお)つること 知(し)る 多少(たしょう) |
(春の眠りは心地よくて夜明けも知らず、鳥のさえずりが聞こえる。
昨晩は嵐の吹く音がしたが、おそらく花がたくさん散ったことだろう)
(日本語読み:もう こうねん/もう こうぜん、中国語読み:モン ハオラン、
簡体字: 孟 浩然、ピンイン:Mèng Hàorán、689年 - 740年)
中国唐代(盛唐)の代表的な詩人。
https://ja.wikipedia.org/wiki/孟浩然
「田園楽」
王維|盛唐|六言四句
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桃紅復含宿雨
桃の紅 (くれなゐ)は復 (ま)た 宿雨 (しゅくう)を含み
柳緑更帯春煙
柳の緑は更 (さら)に春煙(しゅんえん)を帯ぶ
花落家僮未掃
花落ちるも家僮 (かどう)未だ掃 (は)かず
鶯啼山客猶眠
鶯 (うぐいす)啼いて 山客 (さんかく)猶 (な)お眠る
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赤い桃の花は昨夜の雨にぬれ、
緑の柳は春霞につつまれている、
花が散っても、召使の少年は掃こうともしない、
鶯がさえずっても、山荘住まいの人はまだ眠っている・・・
大阪城のビジネスパークの片隅、そこは小さな都会の「桃源郷」・・・
「桃」は万葉集では「毛桃」(けもも)と詠われ女性のことのようで、
中国では漢詩の『詩経』(しきょう)に収録されている「桃夭」(とうよう)は、
美しい若い女性の「若々しい桃」という意味で「女性の嫁入り時」の婚期を意味してるらしい・・・
「桃源郷」
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古代中国の文学者・陶淵明が書いた『桃花源記』に登場する伝説上の楽園・・・
世俗を離れた仙郷、別天地。理想郷、ユートピアと同意で、武陵桃源ともいう。
中国、東晋(とうしん)の太元年中(376~396)武陵の漁師が舟で川をさかのぼってモモの花が咲きにおう林に迷い込み、林の尽きる水源の奥の洞窟(どうくつ)を抜け出ると、そこには秦(しん)の戦乱を避けてこの地に隠れ住んだ人々が、漢・魏(ぎ)・晋(しん)と数百年にわたって世の中の推移も知らず、平和な別天地での生活を営んでいた・・・
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
https://kotobank.jp/word/桃源郷-580116
http://dic.pixiv.net/a/桃源郷
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陶 淵明(とう えんめい、365年(興寧3年) - 427年(元嘉3年)11月)は、中国の魏晋南北朝時代(六朝期)、東晋末から南朝宋の文学者・・・
https://ja.wikipedia.org/wiki/陶淵明
山に入って脱俗的な生活をするという、陶淵明の生活に対する憧れのような、
心の桃源郷を求めた李白の七言絶句の詩・・・
「山中問答」(さんちゅうもんどう)
李白|盛唐|七言絶句
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問余何意棲碧山
余に問ふ 何の意ぞ碧山 (へきざん)に棲むと
(どんな気持ちで深緑の山奥に住んでいるのかと私に尋ねる)
笑而不答心自閑
笑って答えず 心自から閑 (かん)なり
(私は笑うばかりで答えない、ここにいれば自然と心は静かだ)
桃花流水杳然去
桃花流水 (とうかりゅうすい)杳然 (ようぜん)として去る
(桃の花が流れる水に乗って、遥か遠くへ流れ行く)
別有天地非人間
別に天地の人間 (じんかん)に非 (あら)ざる有り
(ここは俗世間とは違う、別の世界があるのだ)
大阪城ビジネスパークの片隅の「桃源郷」は都市にあって、ひとときのオアシスのように、
訪れる人々を心のユートピアに導くようだ・・・
「大阪城桃園」
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北外堀と寝屋川に挟まれた三の丸の外曲輪跡に細長く広がる大阪城桃園は平成11年(1999)3月オープンと歴史は比較的新しいが、ふくよかで華やかな花達は人気が高く、近年では梅、桜と並ぶ大阪城の春風景の一つとして定着している。敷地面積は4,400平方m。12品種200本を超える桃の木を有し、大阪市内最大規模の桃園となっている・・・
大阪城バーチャルツアー|北外堀・東外堀周辺
http://tktaku.com/OSAKA_CASTLE_Photo/tour/
KITA_HIGASHI_Sotobori/momoen.html
街は花々が咲き乱れ、春爛漫の季節がやって来た・・・
(以下・参考サイト)
陶 淵明(とう えんめい、365年(興寧3年) - 427年(元嘉3年)11月)は、中国の魏晋南北朝時代(六朝期)、東晋末から南朝宋の文学者。字は元亮。または名は潜、字が淵明。死後友人からの諡にちなみ「靖節先生」、または自伝的作品「五柳先生伝」から「五柳 ...
https://ja.wikipedia.org/wiki/陶淵明
「桃源郷詩」陶淵明
嬴氏亂天紀 嬴氏天紀を亂し
賢者避其世 賢者其の世を避く
黄綺之商山 黄綺商山に之き
伊人亦云逝 伊の人も亦云に逝く
往跡浸復湮 往跡浸く復た湮れ
來逕遂蕪廢 來る逕遂に蕪れ廢る
相命肆農耕 相ひ命じて農耕を肆め
日入從所憩 日入らば憩ふ所に從ふ
桑竹垂餘蔭 桑竹は餘の蔭を垂らし
菽稷隨時藝 菽稷は隨時に藝う
春蠶收長絲 春蠶長絲を收め
秋熟靡王税 秋熟王税靡し
http://tao.hix05.com/202togenkyo.html
http://tao.hix05.com
http://dic.pixiv.net/a/桃源郷
「田園楽」王維|盛唐|六言四句
http://www.geocities.jp/itaka84/bookn/kansi/69.html
http://japanese.china.com/chinese/peotry1666/20150507/367071.html
http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/02ouidengaku7shu.html
https://ja.wikibooks.org/wiki/高等学校古典B/漢文/桃花源記
http://frkoten.jp/2016/01/06/post-753/
https://kanbun.info/koji/togenkyo.html
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
https://kotobank.jp/word/桃源郷-580116
山中問答 李白
http://nbataro.blog.fc2.com/blog-entry-365.html
春夜 桃李園に宴するの序 李白
http://protaka.sakura.ne.jp/haruya/
http://manapedia.jp/text/3796
http://protaka.blog.fc2.com/blog-entry-243.html
http://kanshi.roudokus.com/syunya-rihaku.html
「春夜宴桃李園序」 李白
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夫天地者萬物之逆旅
夫れ天地は萬物の逆旅(げきりょ)にして
(天地はあらゆるものを迎え入れる旅の宿のようなもの)
光陰者百代之過客
光陰は百代(はくたい)の過客(かかく)なり
(時間の流れは、永遠の旅人のようなものである)
而浮生若夢
而して浮生は夢の若し
(しかし人生ははかなく、夢のように過ぎ去っていく)
爲歡幾何
歡を爲すこと幾何(いくばく)ぞ
(楽しいことも、長くは続かない)
古人秉燭夜遊
古人燭を秉りて夜遊ぶ
(昔の人が燭に火を灯して夜中まで遊んだのは)
良有以也
良(まこと)に以(ゆえ)有る也
(実に理由があることなのだ)
況陽春召我以煙景
況んや陽春の我を召すに煙景を以てし
(ましてこのうららかな春の日)
大塊假我以文章
大塊の我に假すに文章を以てするをや
(霞に煙る景色が私を招き、私に文章を書く才能を授けてくれた)
會桃李之芳園
桃李の芳園(ほうえん)に會(かい)し
(桃や李の実ったかぐわしい香りのする園に集まり)
序天倫之樂事
天倫(てんりん)の樂事(がくじ)を序す
(兄弟そろって楽しい宴を開くにあたって申し上げる)
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